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2 0 0 1 - 0 9 - 1 5
No.
0 0-
人生は─
L I F E i s
「────後悔しないのか?」
「え……?」
それは前夜。
「今までうまい具合に潜伏してきたんだろう。この計画に加担すれば、霊界に存在を察知されることになるんだぞ。」
「……。」
「?」
「……ふふ……。」
「な、なぜ笑う?」
「オレの心配、してくれるんですか?」
「別に心配など……。」
「そうですよね。」
「……。」
「あなたのほうこそ、大丈夫なんですか?」
「何がだ?」
「あまり自分を傷つけないほうがいい。」
「何がいいたい?」
「別に。ただ、あなたをみていると自虐的な生きかたをしているように思えるから。」
「……。」
「ひとつきいてもいいですか?」
「何だ?」
「『マゾ』なんですか?」
「真面目にきくな。」
「……そうだとしたらかなり好みなんですけどね……。」
「断じて違うぞっ!」
「……くすくす……。」
「まったく、相変わらず分からん男だな。」
「……優し過ぎるんですね、きっと。」
「?」
「痛いくらいに優しいヒトだから……。」
「馬鹿。勝手な想像で語るな。さっきのことだってな、つまり……、おまえが生温い生活に執着しているからきいてみただけだ。」
「分かってますよ。あなたはオレの心配などしない。他に思うところがあるから。」
「だから勝手に……!」
「『人生は痛快に。』。」
「……何だ?」
「昔、あるヒトがいっていたんですよ。『たった一度しかない人生なんだ。痛快に生きないでどうするんだよ。』って。」
「……。」
「過去を振り返ってみると、厭なことはたくさんあったけど、案外おもしろおかしく生きてきたな、って思う。好き勝手に、我侭放題に、でも惰性に飲まれず力一杯に生きた。その上ふたつの世界まで経験して、総合的にみればプラス計上ですよ。ね、得していると思いませんか?」
「……さあな。」
「だからね。」
「?」
「オレは後悔しないんだ。……長く生き過ぎた。この先目新しいことも起こらないだろうし。」
「……。」
「それに、あなたにも会えたから。もう人生に悔いはない……。」
「……。」
「……何?」
「まるで、今から死ぬみたいなことをいうんだな……。」
「まさか。」
「……。」
「死ぬのは恐い。」
「……そう、だよな。」
「そうですよ……。とりあえず、あなたには目的があるみたいだから。悪党ぶるのはいいけど、性に合わないことばかりしていると目的を達成する前にへばりますよ。」
「余計なおせ……。」
「余計なお世話かもしれませんけど。」
「……。」
「もう少し痛快に生きてもいいんじゃありませんか?」
「……。」
『人生は痛快に。』。
「ふん。……いわれんでもそうするさ。」
「そうですか?」
金魚の水槽
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