calling・calling

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calling・calling

「はい、南野です。」
「もしもし？」
「！」
「ああ待った、切らないで！」
「……。」
「……。」
「……。」
「……ありがとう。」
「……何の用だ？」
「クイズを出そうと思ってね。」
「クイズ？」
「さて、『明日は何曜日でしょう？』？」
「……。」
「……。」
「……日曜日。」
「大正解！流石秀一くん。では、正解の商品だよ。」
「？」
「明日、デートしよう。」
「……バイ、ハニー。」
「コラ切るな！！」
「……。」
「まったく、相変わらず自分勝手な困ったコだな。」
「どっちが自分勝手なんだ……？」
「まあ……、それをいわれると、俺もひどく心が痛むのだが。」
「何が『心が痛む』だ？よくもそう簡単に嘘が吐けるものだな？」
「……。」
「……顔もみたくないんだ。」
「だから電話にしたんだけど。」
「声もききたくないんだよ……！」
「……。」
「……もう、二度と現れないでくれ。」
「厭だよ。」
「もう、二度と……。」
「それ……。」
「……。」
「キミの本心？」
「……。」
「なぜ電話を切らないの？」
「……。」
「……。」
「……。」
「……はなしがしたいだけだよ。」
「はなすことなんかない。」
「ああ……、じゃあキミは何もはなさなくていいよ。俺がずっとしゃべり続けるから。」
「厭な会合だな……。」
「うん、それならキミも時々しゃべるといい。というか、そのほうが俺はうれしい。」
「……なぜ、電話番号を知っているんだ？」
「……。」
「……ん？」
「……いやあ。これをいうと、キミが電話を切ってしまう恐れがあるのでね。」
「いえよ。……後のことは知らないけど。」
「おじさんはね。」
「うん。」
「かわいい『蔵馬』のことなら何でも知ってるんだよ～♪」
「……病院行けば？」
「切るなー！」
「何……？」
「明日、五時半に迎えに行くから。」
「なあ。勝手にはなしを進めるなら、オレにもひとこといわせて貰おうか。」
「何？」
「二度と・電話を・かけてくるな……！」
「うん。そのために明日直接会おうね？」
「……。」
「……。」
「会いたくない……。」
「キミは拒否できない筈だよ。」
「……なぜ。」
「この前会ったときにさあ……、俺、キミに指輪を渡したけどね。あれ、キミにあげたわけじゃないんだ。……あげるならもっといいモノにするしね。」
「……。」
「だから、『借りていたモノを返す』ために、キミは俺に会わなければならない。」
「……その手で何人のオンナを口説いたんだ？」
「あはは。」
「オレが返そうとしても、受け取らなかったのは誰だよ……。」
「だって、素直に受け取ったら、もうキミと遊ぶ機会がなくなるじゃないか。」
「……。」
「この年になるとね、若いコと遊ぶと生きる意欲が湧く、っていうのかな。そう。明日キミに会えないと、おじさん死んじゃうかもしれないよ……。」
「死んじゃえ。」
「だから切るなってば！」
「……困る。」
「何が？」
「おまえ、あの車で来る気だろう。」
「うん、ダメかな？」
「……目立つことはしたくないんだ。人目につくのは、困る。」
「うーん……。大丈夫だと思うけどな。……でもキミが厭なら、近所のスーパーの駐車場とか、公園の脇道とかで待ち合わせする？」
「その前に、おまえ、何でオレの家を知っているんだよ？」
「それはね～♪」
「……済まん、きいたオレが悪かった。」
「多分、人目にはつかないよ。エンジン音は静かだし、五時半なら、はちあっても新聞配達のヒトくらいなものじゃないかな？」
「ちょっと待て。」
「ん？」
「……『五時半』って、朝のか？」
「うん。」
「勘弁しろよ……。」
「あれ？秀一くんも『蔵馬』みたいにネボスケなの？」
「……。」
「どうせ会うなら長い時間一緒に居たいし、夕方から会って泊りになったらキミが困るだろうから……、おじさんとしても気を遣った選択なんだけどなあ。」
「……。」
「会ってくれるね？」
「……。」
「……。」
「これが最後だ。」
「うん。その台詞、あと五回はきく予定でいるから。」
「……。」
「楽しみだね？かわいい『蔵馬』。」

金魚の水槽

ふざけたオジサンですが、蔵馬くんのことなら本当に何でも知っていそうでコワイです。「白い夢」の後にご覧ください。
※日付は、更新後記より。

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