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オレは本を閉じる。そろそろ、お茶くらいは入れないといけない。
その気配を察して、彼が素早く制する。
「構わん。もう消える。」
立ち上がり、背を向けて窓際まで進んでいく。振り返りもしない。
だが、不図彼は立ち止まる。そして躊躇いがちな声が……、
「……また、来てもいいか?」
「飛影……。」
そのあまりにも配慮のないことばに、オレは悲しくて、それよりも無償に寂しくて、感情的に彼を責めていた。
「なぜ、そんな……。きかなければ分かりませんか!?」
はっとする。
彼が忌々しげな顔つきで振り向いた。そのままずかずかとオレに歩み寄ってくる。
今までそんなことを一度も思ったことはないのに、オレは一瞬殴られる、と肩がこわばった。
だが────
「あ。」
彼は何の前触れもなくオレの口を塞いだ。
「ん……。」
噛みつくような、荒っぽいくちづけだった。彼の右手は乱暴にオレの髪を掴み、左手が頬に優しく触れた。痛かったし、優しさなんて微塵もないような行為だったけど、オレには彼の熱情が切ないくらい感じられた。
これが現実のすべて。
……ばかばかしくて涙も出ない。
長い時間が過ぎ、オレは解放される。両肩を掴んで押し退けられた後、彼は素っ気無く歩み去り、窓枠に手をかける。
「俺は間違っていると思うか?」
オレは違和感の残るくちびるを手の甲で拭った。
「分からない……。でも、あなたが間違っているとしたら、オレも間違っていることになるから……。」
金魚の水槽
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