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Meeting


 確信犯な彼は、オレの眠るベッドの中に潜り込む。「また昼寝なの?」、「寝てばっかりだね、そろそろ起きようよ?」、そういいたげな視線がちょっとうるさいけど、頬に触れるキスが甘いから許してあげよう。しかし、油断は禁物。オレの無抵抗をいいことに、彼の身体がオレの上に……。そして滑らかな舌が、首筋を這い────
「あはは。コラ、くすぐったいよ。ヒゲが。」
 笑いながら身をよじると、上から桑原くんの手が伸びてきて、
「コレ、除きなさいサキチ。」
 オレの胸の上にとてっと座っている小さな虎猫の背をぽんぽんと叩く。サキチはミーと弱々しい仔猫の鳴き声で、彼の手に促されて床の上に退避した。
 彼はベッドの縁に腰掛けて、
「たまに猫に好かれてるからって、喜んでるなよ。」
 少し怒ったような口調。
 ああ、キミでもそういうこと、いうんだ。彼の中に新鮮な一面を発見して、何だかうれしくなった。
「ねえ桑原くん。もしかして、猫に嫉妬してる?」
 すると、彼は絶句の一歩手前の顔をして、
「……てめ、この間の仕返しか?」
「さあ、どうでしょうね。」
 オレは余裕の微笑みで、彼をみ上げる。
 しかし、彼もまた確信犯。反撃の糸口をみつけて「へへ。」っと一発、悪戯っ子のように笑うと、
「そーゆー態度するのかー?……悪いけど、手加減しねえぞ?」
「え?」
 だから、訝しがってももう遅い。
「こうしてやるっ!」
「あーっ!桑原くんそれ反則っ!!」

 甘い企みに呑まれていく。
 初めは試みた抵抗も、止めてしまえば彼の行為が優しく変わるだけ……。
「桑原くん……、子供がみてるよ。」
「……莫迦、子供とかいうな。」
 オレの視線の先で、サキチが無垢な目を丸くしている。
 彼の手の内も、本当はみえ透いているけど、どうでもいい。今は何も知らない振りをして、彼にすべてを委ねることのほうが大切だ。
「ん……桑原くん……。」
「和真って呼べよ……。」
「あ……。」
「……呼べよ。」
「カズマ……。」
「……。」
「……カズマ……。」
 耳元で彼の声が「スキだぜ。」と呟いた。
 本当に、生きるって神秘的だ。不思議なくらい冷静に、サキチが首の後ろを掻いている姿がみえる……。


金魚の水槽

旧タイトルは「キイドア」。二人の距離を象徴する呼び名。男を本気にさせると恐いです。
※日付は、テキストファイルでの最終更新日です。(一部改作しております。)

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