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企画崩れの対談  p e a c e f u l t i m e s


 ホテルの廊下を思い浮かべてください。
 一列に、部屋が並んでいます。
 各部屋のドアには名前が書かれた紙が貼ってあり、そこが誰の部屋であるかが分かります。
 そう、右から順番に──

 廊下側
 躯、幽助、海藤、時を渡る男、妖狐、黒鵺、鍛冶屋、桑原
 窓側

 ちなみに、各部屋を仕切る壁にもドアがあります。
 隣合っている限り、行き来は自由です。
 では、始めましょうか。

 (その1)
 ドアの張り紙には『むくろちゃんのへや』と書いてある。

蔵馬:「むくろちゃん」て。。。

 入室してください。

蔵馬:失礼します。

 挨拶をしてください。

蔵馬:ええ、と。この度はわざわざご足労いただきまして……。
躯:形式ばった挨拶をするのだな、黄泉の参謀。
蔵馬:もう黄泉の参謀ではないですけどね。
躯:それより、オレはなぜここに呼ばれている?
蔵馬:あ、ええ……と。これには色々と事情がありまして……。
躯:?
蔵馬:簡単にいいますと、登場人物の皆さんと、オレとが、和やかに歓談できる機会を設けよう、という趣旨の企画らしいです。
躯:(登場人物?企画?)要するに、サシでハナシをつけよう、というヤツか。
蔵馬:表現としては間違っていませんが、ニュアンスとしては若干違うと思います……。
躯:まあいいさ。おまえとは一度会ってはなしがしたいと思っていた。
蔵馬:そうですか?それは光栄です。
躯:その不自然に友好的な態度はいけ好かないが。
蔵馬:……。
躯:反面、飛影はおまえのことをいたく買っている。
蔵馬:それは……。煙たがっている、の間違いじゃないですか。(と苦笑。)
躯:毛嫌いはしている。だが、おまえの存在を認めていることも事実だ。あの男は素直じゃない。気に入っているものを、わざわざ口に出して気に入っているとは、死んでもいわんだろう。
蔵馬:確かに。(と笑う。)
躯:何だ?
蔵馬:いえ、何でもないです。
躯:おかしな男め。そのポーカーフェイスは自前か?
蔵馬:さあ、どうでしょう。
躯:まあ、かくいうオレも、実はおまえの実力を認めている一人だ。
蔵馬:そうなんですか。
躯:おまえ。自分が有名人じゃないとでも思っているのか?
蔵馬:多少の知名度は、在るとは自負していますが……。でも昔のはなしですよ。
躯:魔界に流れる月日を人間界のそれと一緒にしてもらっては困る。まあ正直なはなし、おまえが黄泉の愛人じゃなければ、オレがスカウトしていたさ。飛影とワン・セットでな?
蔵馬:あの、すみません?
躯:何だ?
蔵馬:今、変なことばが差し挟まっていたような気が……?
躯:ひえいとわんせっと。
蔵馬:その前です。
躯:(していたさ?)
蔵馬:……よみのあいじん。
躯:ああそっちか。
蔵馬:(そっちそっち。)
躯:違うのか。(と真顔。)
蔵馬:違うでしょう。。。
躯:だが、噂になっていたぞ?
蔵馬:あまりききたくありませんが、はなしの流れからいえば、きいたほうがいいんでしょうね……。ちなみに、オレと黄泉はどのような関係と噂されていたんですか?
躯:カラダでいうことをきかされていたのだろう……?(と、可哀想なヒトをみる目でみる。)
蔵馬:それ、絶対に違いますからっ。
躯:夜な夜な××なことをされ続けていたのではないのか。
蔵馬:(伏せ字!)
躯:だから、戦争が終わってすぐに、逃げるように魔界を去ったのだろう。人間界に逃避行か……、余程厭だったのだな、哀れな男め。
蔵馬:生活圏が在るだけです。。。
躯:……とまあ、ここまでのはなしは大方冗談なのだが。
蔵馬:(冗談なのか!)
躯:しかし、おまえが魔界の連中からあまりよく思われていない現状は、端的に伝えたつもりだ。
蔵馬:ものすごく回りくどかった気がしますが……。よく、思われていないんですか?
躯:自分ではどう思う?
蔵馬:まあ……、そうですね。ほんの十数年間、人間界で人間として暮らしてきたというだけで、黄泉の右腕だったにも関わらず、魔界の混乱を収める役割にも就かずに魔界を去っている現実を鑑みれば、逃避行しているといわれても仕方がないか……。
躯:よく分かっているじゃないか。
蔵馬:ほとんど特赦扱いですからね。逆に、あなたの国のヒトたちは、本当に働き者で。
躯:働き者かどうかは知らんが。オレたちは元々魔界しか知らんからな。おまえの愛人だった男に比べれば、人間界に興味があった訳でもなし、霊界は侵略には熱心だが国境整備には無関心の役立たず。そのせいで「人間の迷子」は増えるわ魔界の人口流出は進むわで、こちらとしては非常に迷惑している。
蔵馬:(愛人じゃないけど、ここはさらっと流したほうがいいのだろうか……。)
躯:魔界の秩序を保つだけでも大変なんだ。人手はないよりあったほうがいい。それもただの人手ではない。実力が伴わなければ意味がない。
蔵馬:それ、もしかして、引き抜きですか?
躯:もちろんだ。今からでも遅くはない。協力するなら喜んで受け入れるぞ?
蔵馬:本当に困っているんですね。。。
躯:ああ。何せ、煙鬼の方針は絶対でな……。
蔵馬:迷子(人間)は無事に親元(人間界)に帰すという?
躯:それで、これ以上迷子が増えるようなら、人間界に出張所を設けて、そこを主な対応拠点にしようかというはなしまで出ている。どうだ?適任だろう?(とニヤリ。)
蔵馬:あまりそうは思いませんが……。
躯:名前は既に考えてあるのだ。昔、霊界が人間界に設置していた機関の名称に肖って……。
蔵馬:(う、まさか。)
躯:名づけて『魔界探偵』!←ずーん
蔵馬:(やっぱり……。)
躯:何だ?気に食わないか?
蔵馬:(ノスタルジックなアニメのタイトルのようだ……。)
躯:……本当は後ろにカタカナの名前を続けたいところなのだが。ゴレンジャーとかロクレンジャーとか。ああ……だが、あまり人数を雇うと経費ばかりかさんで大変だから、実際にやるとしたらサンレンジャーくらいで抑えておいてくれたほうが、多分予算がつき易い。
蔵馬:はあ。←魔界探偵サンレンジャー
躯:お、その顔は、だんだんやる気になってきたか?
蔵馬:ならないです……。
躯:何だ、意外とごねるんだな……。よし分かった。条件をいってみろ。おまえは一体『何レンジャー』になりたいんだ?
蔵馬:レンジャーじゃなければ駄目なんですか?
躯:レンジャーにすると困る理由でもあるのか?
蔵馬:いや。その。……特にありません。
躯:ふん。やれやれだな。大した理由もないのにあからさまに厭がるとは。アカレンジャーさんに失礼だとは思わんのか。
蔵馬:あかれんじゃーさん。。。(他のレンジャーさんはいいのか?)
躯:え、ムラサキレンジャーさん?
蔵馬:(誰それ!)
躯:チャレンジャーさんって有りだと思う。←納得
蔵馬:……。
躯:何だまだ駄目か?それなら仕方がない。時間が在るときは、オレもイチレンジャー分手伝ってやろう。
蔵馬:(単位なのか。) ※1レンジャー=10万馬力
躯:……そうだな。オレがやるとしたら、例えばタマムシレンジャー。
蔵馬:(たまむし?)
躯:同じ組織に所属していながら、実は敵か味方か分からない、とっても玉虫色の存在だ。
蔵馬:(いやだーっ。)

 ……。

 ……。

躯:……というはなしも、まあほとんどが冗談なのだが。
蔵馬:(何しに来たんだろう、このヒト。。。)
躯:出張所のはなし。無理強いする気はないから、考えるだけ考えてみてくれ。返事は急がん。
蔵馬:ああ、そっちは冗談じゃないんですね?
躯:当然だろう。おまえも、人間づらしてやっているようだが、いつまでも同じ生活を続けていられると思うなよ?
蔵馬:……。
躯:ん、どうした?
蔵馬:いえ……。結構重たいですね、そのことば。
躯:別に深い意味でいったつもりはないさ。それに、場面や状況を組み替えれば、誰にだって当てはまることだろう。そういう意味ではオレも同じか。「いつまでも王様づらしていられるな。」……なんてな。(と自嘲。)
蔵馬:……。
躯:ところで。おまえに一つ、いっていないことがある。
蔵馬:え、何でしょう?
躯:この会合に呼ばれているということを、オレの側近づらしている近しい子分共があまりしつこくきいてくるモンだから、面倒臭くなって、つい答えてしまったのだ。
蔵馬:?
躯:「人間界で婚カツだ。」と。
蔵馬:こ。。。
躯:そしたら、あれよあれよという間に噂が広がって……。
蔵馬:それはそうでしょうね!
躯:最終的には「妖狐蔵馬と見合いをするらしい。」というところで落ち着いている。
蔵馬:(がーん。)
躯:ウチの77レンジャーは直情派だから、要塞の中は妙な色めき立ちかたをしているが、まあ、あまり気にしなくてもいいと思う。……多分。
蔵馬:(「多分」、いらないいらない……。)
躯:しかし、万が一ということもない訳じゃないから、一応伝えておく。次に魔界に来るときは、背中に気をつけろ。
蔵馬:もう帰ってください。。。

 では、隣室に移動してください。

躯:どうだ?ポーカーフェイスは崩れたか?←うれしそう
蔵馬:ええ、かなり……。(どこまで本当なんだろう、このヒト?)

続く ...

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