Date
2 0 1 0 - 0 8 - 1 4
No.
0 3-
企画崩れの対談
p e a c e f u l t i m e s
(その3)
ドアの張り紙には、控えめながら丁寧な字で『海藤 優』と書いてある。
蔵馬:そう、普通はこうですよね。普通は。
入室してください。
蔵馬:(ようやくマトモな会話ができる……。)←失礼だろ
挨拶をしてください。
海藤:やあ。
蔵馬:どうも。
海藤:あれ。南野、痩せた?
蔵馬:や、やつれてないですよっ!
海藤:は?
蔵馬:いや、何でも……。←前のゲストを引きずる男
海藤:まあいいけど。何年振りだろう?
蔵馬:一回、クラス会みたいの、やりましたっけ?
海藤:ああ、でもそれ、俺は出てないから。
蔵馬:そうでしたっけ??
海藤:ごめんねかげうすくて。
蔵馬:いえいえとんでもない。
海藤:まあいいけど。自覚してるし。
蔵馬:それにしても、ご活躍ですね。著作は色々と拝読していますよ。
海藤:それはどうも。ま、仕事はある内が花だと思って、何とかやってるけど。おまえは、会社員だって?
蔵馬:ええ、一応。
海藤:まーた似合わないモンを選んだね……。
蔵馬:ははは、自分でもそう思う。
海藤:それでも、二、三年したら、ふらっと大学受験して、いきなり国立大学とか通い出してるんじゃないかー……。
蔵馬:←にこにこしてきいている。
海藤:……ってクラス担任と賭けてたから、結構儲けさせて貰ったよ。←けろっと
蔵馬:賭けって。。。ヒトの人生を。
海藤:ホントに興味なかったんだー、大学。ある意味、予想通りだけどさ。
蔵馬:儲けさせて貰った、ということは、オレは進学する気はない、と踏んでいた?
海藤:うん、まあね。
蔵馬:どうしてそう思った?
海藤:えー?っていうか、おまえ、勉強、嫌いだろう?
蔵馬:え。
海藤:……。
蔵馬:……よくみ抜きますね、そういうの。
海藤:伊達にモノ書きやってないから。南野ってさあ、好きなことには時間を惜しまないけど、嫌いなことはトコトン避けて通る性格だよね。そういうヤツは、心底納得できる理由がない限り、自分から勉強しようなんて思わない。イコール、進学なんかしない。
蔵馬:ふふ。
海藤:今も、何もないね?例えば、医者になりたいとか、弁護士になりたいとか。
蔵馬:うーん。ないですね……。
海藤:あんまり忙しくなりたくないでしょ。基本的にさ。
蔵馬:流石。よく観察している。
海藤:……こっちの世界には興味ない、か。
蔵馬:あー……、そういう訳ではないけど。
海藤:……。
蔵馬:ん、何ていうか。オレ、みた目より長生きなのもので。大抵の学問はやり尽くしている、というか……。
海藤:おお、いうね。
蔵馬:厭味のつもりはないよ。ただ、そっちの方角での興味は、もう頭の片隅にもない、というはなし。
海藤:羨ましいというか何というか。
蔵馬:また心にもないことを。
海藤:で。『そっち以外の方角』が仕事?
蔵馬:うん。今は。
海藤:ふうん。じゃあ、こっちの世界をベースに生きていくんだ?
蔵馬:今のところは。……っていうか、実はあまり先のことは決めてないんだ。
海藤:へえ。
蔵馬:人間でいられる内は、ここに居たいけどね。どうなるかは分からないな……。
海藤:あ。今、「こいつにしゃべるはなしじゃないな。」とか、思ったでしょ。
蔵馬:……。
海藤:いいのいいの。俺は俺で割り切ってるから。実際、本気で悩みを打ち明けられても、何もしてやれないし。そこんところはドライでいきましょう。
蔵馬:(鋭いなあ……。)
海藤:え。何。
蔵馬:ううん、なんでもない。(気が抜けないなあ……。。)
海藤:そういやさあ、出版関係の知り合いに、心霊現象を研究しているヒトがいるんだけど。最近多いんだって?
蔵馬:え?
海藤:街ん中とか、あちこちにさ。所謂『人間じゃないヒト』たちが増えてきたって。うれしそうにはなしてたよ。
蔵馬:ああ〜……。
海藤:何でも、昔は山とか森の中にしか居なかったモノが、今になってこぞって人里に下りてきているんだと。……ほとんど狸か狐のレベルだね。
蔵馬:すみません。。。←思わず謝る
海藤:あれってやっぱ本当なのか。
蔵馬:ええ。
海藤:ふうん。変な雰囲気は感じないけど。
蔵馬:一般レベルでは何も変わってませんから。今は、前と比べれば『出入り』し易い状態ではあるけれど、魔界も体制が安定したし。元々魔界の住人は根が温厚な平和主義者がほとんどなんですよ。逆に、彼らの多くは「人間のほうが怖い。」と思っている。
海藤:確かに。そのヒトもいってたけど、凶悪事件はいつの時代も人間が起こしているって。……人間の一人としては情けない限りだな。
蔵馬:いいヒトが居れば悪いヒトも居る。どこの世界でも同じだよ。
海藤:悪いね、気を遣わせて。
蔵馬:別に。それにほら、オレみたいな悪い妖怪が一匹居るだけで、その他大勢のワルイニンゲンを相殺するだけの分子になり得ることもある。
海藤:南野、悪い妖怪なのか?
蔵馬:あれ?知りませんでした?
海藤:いや、何となく分かってた。
蔵馬:おい。。
海藤:まあそれは置いといて。この間、街で偶然、一年のとき同じクラスだったコに会って……。
蔵馬:え、誰?
海藤:名前は忘れたけど。
蔵馬:はあ……。それで?
海藤:っていうか、実は顔も憶えてなかったんだけど。
蔵馬:それ、ホントに同級生か……?
海藤:多分。おまえのはなし、してたし。
蔵馬:オレの?何で??
海藤:甘いな、南野。おまえ。自分が有名人じゃないとでも思っているのか?
蔵馬:(デジャヴュ?)←ううん、コピペ
海藤:昔から、色々と噂の対象にはなっていたけど。何か、今でも内輪では変な噂が流れているらしいな……。
蔵馬:ハイ。←挙手
海藤:どうぞ?
蔵馬:今の発言に二点ばかり質問があります。
海藤:うん。
蔵馬:ひとつめ。昔から、噂って……?
海藤:あ。知らない?
蔵馬:知らないからきいている。
海藤:南野秀一がしばらくの間『帰宅部』だったのは、高額な盟王高の学費を稼ぐために、繁華街で金持ちのオジサン相手に××な行為をしているからだー、とか。
蔵馬:(ここで伏せ字か……。)
海藤:あれ、頭痛?(バファリンあるけど飲む?)
蔵馬:ううん、大丈夫。油断してただけ。。。
海藤:まあ、その後すぐに生物部に入ったから、それ切り噂も立ち消えになったけど。
蔵馬:ふたつめ。内輪で流れている変な噂とは?
海藤:頭痛そうだから、きかないほうがいいんじゃない?
蔵馬:お気遣いなくっ。
海藤:ええとね。何ていってたかな。そのままの文面でいい?
蔵馬:?
『ねえねえ。南野くんって、○○バーで働いてるんだって〜。お店知ってたら教えて〜?』
海藤:──ってきかれたから「知らない。」って答えておいた。
蔵馬:(やっぱりそっちか────────
海藤:で。どこのお店で働いてるんだ?(最近はサラリーマンも副業が大事だっていうしね?)
蔵馬:お店じゃないからっ。
では、隣室に移動してください。
海藤:あ。これでおしまい?
蔵馬:ええ、そうらしいです……。←若干疲れ目
海藤:じゃあ帰ろっかな。
蔵馬:え。
海藤:え。って何?
蔵馬:いや。……あっさりしてるな、と思って。
海藤:こってりしてもいられないでしょ。ほら?南野サン的には?会わせたくないヒトとか、居るでしょうから?
蔵馬:……。
海藤:あのさ。。。いちいちそういう顔しないで貰える?別に厭味でいってるつもり、ないんだけど。
蔵馬:分かってる。済まないね、気を遣わせて。
海藤:いえいえ。まあ、その内また会おうよ。今度は酒でも飲みながらさ──
続く ...
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