Date
2 0 1 1 - 1 0 - 1 5
No.
0 6-
企画崩れの対談
p e a c e f u l t i m e s
(その6)
ドアの張り紙には、『黒鵺様』と印刷してある。
蔵馬:(芸能人の楽屋みたいになっている。)失礼します。
黒鵺:おお。来たか、蔵馬の応用編。
蔵馬:だから「応用編」じゃないって。。。
黒鵺:え、何、その困った顔は。
蔵馬:正直なところ、ノーマークだったんですよね。おまえが来ること。
黒鵺:何それ。
蔵馬:うーん。つまり、おまえとオレが、和やかに対談している姿を想像し辛いというか、何というか……。
黒鵺:おまえ。そういうこといってると、『黒鵺様・アイ・ラブ』な美しいオンナ・ファンたちに大ひんしゅくを買うぜ?
蔵馬:冗談はさて置き。
黒鵺:(サラリと流された☆)
蔵馬:黒鵺クンは、実は「キャラが確立していない。」といわれている。
黒鵺:……んまあ、そうかな。本編には登場していないし。
蔵馬:このサイトの『作者』と呼ばれているヒトも、実は劇場版は数回しかみたことがない、といっている。
黒鵺:え、そうなの??そういう状況で、ヒト(俺)をネタにしちゃあダメでしょう。。。
蔵馬:まあ、そこを突かれるとイタいなあ……──ともいっている。
黒鵺:おまえ、マネージャーか何かなの……?
蔵馬:……オレも、おまえと一緒に居た記憶、あまりないからな。←ボソリと
黒鵺:(爆弾発言!)おい、おまえっ。
蔵馬:なんですか。(指を指すな。)
黒鵺:ドサクサに紛れて、今、ヒドイこといっただろ。おまえに会うために、折角「化けて」出てきてやったのによ。酷いなあ、この冷血漢。泣いちゃうよ?
蔵馬:済まん。
黒鵺:は……?いや……、素直に謝られても。。
蔵馬:記憶って、どうしても薄まってしまうんですよね……。オレ、おまえより長生きする予定ではなかったし。
黒鵺:……。
蔵馬:やっぱり残酷なことかな?おまえと一緒に居た記憶より、後に経験した事柄のほうが鮮明に憶えている。ヒトもそう。時代もそう。何もかも、新しい出来事が鮮やかだ。
黒鵺:っていうか、それでいいんだと思うぜ?
蔵馬:……。
黒鵺:俺はうれしいけどね。おまえが俺よりも長生きしてくれて。長生きしてくれたおかげで、あの頃よりは少しはマシな生き物になっているみたいだし。……俺のこと、少しは憶えていてくれるなら、それでいいよ。
蔵馬:黒鵺……。
黒鵺:ん?
蔵馬:……鼻から毛が。
黒鵺:だはー!折角いいはなししてたのにっ。(何なのこのコはっ。)
蔵馬:で、キャラが確立していないオレの元・相棒の黒鵺クンですが、蓋を開けてみれば色々な場面で共演していますね。
黒鵺:(鼻毛まで流されたー☆)
蔵馬:オレとしては、忘れていた記憶が掘り起こされる感じで、まあうれしくなくもないんですが。
黒鵺:そこは素直にうれしいといおうよ。
蔵馬:黒鵺としてはどうですか?
黒鵺:え。……うーん。俺も、まあうれしくなくはないんだけど。
蔵馬:(うれしくなくはない……。)←ヒトにいわれるとことば尻が気になる
黒鵺:どうせなら、もう少し「いい男」に書いて欲しかったかなー。ほら、幸いキャラが確立していないんだし?
蔵馬:それはどうなんでしょうね?
黒鵺:何、その不服そうないいかたは?
蔵馬:だって、オレのほうは、自分でいうのも何ですけど、本編から所謂「いい男」として確立している訳だし……。
黒鵺:(断言した!)
蔵馬:ソレと絡む役柄としては、多少三の線(三枚目)に寄っていたほうが、しっくり来ると思う。
黒鵺:おまえは、何かというと俺を落としたがるよね?
蔵馬:それを望んでいるんだと思ってました。←にこっと
黒鵺:でもさ。おまえも結構三の線で書かれているよ。俺の相棒だった時代のおまえは、姿形に似合わず、相当なオトボケニーチャンだ。
蔵馬:そうなんですよね……、おかしいな。
黒鵺:まあ、そこが「カワイイ♪」とかいわれてるみたいだけど。本人的にはどーなの?
蔵馬:真面目にやってきたつもりなんですけどね……。
黒鵺:かくいう俺のほうは、書かれるたんびにお父さん化している。我侭妖狐チャンを、厳しくも優しくみ守る保護者の黒鵺様──といったところか。まあ、これについちゃあ、俺としては不本意といわざるを得ないな。
蔵馬:へえ。
黒鵺:だってそうだろう?相棒とは名ばかりで、おまえとはびっちり組んでやっていた訳じゃないんだ。その間、仕事のはなしは沢山したかもしれないが、プライベートなはなしはほとんどしなかったと思うぜ?
蔵馬:んー、確かにそうですね。短期集中型の仕事の場合、プライベートな話題は無駄な情報になりかねないし、ましてやこの手の稼業ではお互いの弱点をさらし合うことにつながる。……盗賊になり立ての頃に、十分に気をつけるように教育を受けていたから、オレもおまえとは和気あいあいにやっていた印象は薄いな。まあ、百歩譲って、信頼はしていたけど。
黒鵺:百歩も譲るの?
蔵馬:大股でね。
黒鵺:はあ……。←ため息
蔵馬:くす。
黒鵺:でも、……ま、いいか。
蔵馬:?
黒鵺:俺さあ、おまえについて色々書かれている中で、これだけは本当だと思うことがあるんだ。
蔵馬:え?
黒鵺:『天邪鬼』なところ。
蔵馬:……。
黒鵺:おまえ、昔からわざと憎まれ口叩くこと、あっただろう?……わざわざ自分から、離れよう、嫌われようとしている節が、ある奴だった。そういう意味では、落(堕)としたがっているのはむしろ自分のほうかな、蔵馬氏?
蔵馬:……。
黒鵺:ふふん。
蔵馬:……黒鵺のくせに、痛いところを突くんだな。
黒鵺:ユウレイ相手に油断するな、ということだ。(と笑う。)
蔵馬:……。
黒鵺:なあ。相変わらず、他人が怖いのか?
蔵馬:怖くはないよ。(と苦笑。)
黒鵺:ほんとかあ?
蔵馬:本当。
黒鵺:……。←疑いの目
蔵馬:変な顔するなよ。本当だ。長く生きてきて、いいヒトにも沢山出会えたし。今では、世の中捨てたモンじゃない、ということばの意味が少しは分かるようになってきた。
黒鵺:ふうん。
蔵馬:おまえのいう通り。昔は、いい奴は自分より先に死ぬから、自分が後で悲しい思いをしないように、自分が相手を好きにならないように、相手が自分を好きにならないように、心をコントロールしようと躍起になっていたところがあったかもしれない。……いや、昔だけじゃない。つい最近までずっとそうだった。
黒鵺:うん。
蔵馬:でも、色々あってね──オレより先に死んだと思っていたヤツが実はピンピン生きていたとか、人間だと思っていたヒトが転生したら実は魔族だったとか、冗談みたいな出来事が次々に起こって。今は素直に、面白いなーとか、思うんだ。
黒鵺:うん。
蔵馬:本当に、ヒトって面白い。なぜ今まで避けて通ってきたのだろう。
黒鵺:なあ蔵馬。
蔵馬:ん?
黒鵺:「自分より先に死んだいい奴」って俺のこと?
蔵馬:……。
……へへ。ありがとな。化けて出てきてよかったぜ。
蔵馬:あ、黒鵺!
──黒鵺の姿は消えた。もう思い残すことはない、と自ら示すように。そして、静寂が耳を打つ小さなホテルの一室に、本当に最後に、懐かしい相棒・黒鵺の声が響くのだった。
黒鵺:では、隣室に移動してください。←鼻をつまんだ声
蔵馬:おまえの声だったのかーっ!!(怒)
続く ...
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